カルマのふたり

肌寒い十一月のある日曜日。
今日は、自分がエースを務める剣道部の練習試合。

きっかけは、良く憶えていない。
確かなのは…

試合相手に場外へと吹っ飛ばされた自分と双子で片割れのとがぶつかった事。

その時、痛みと揺れる世界で、俺たちは気を失った。


・。・・。・。・。・・。・。・。・・。・。
1 邂逅。


「――…っ、!!」

「ぁ、う?!…!おはよう。」

誰かに揺すられる感覚があって、はゆっくり目を開くとそこには片割れの姿が。試合のために着ていた剣道の防具は外しているが、胴衣はそのまま着ている。

「…もう、試合終わったの?」
の脇にある防具袋にそれらが仕舞われていて人の姿も見当たらないことから、どうやら自分は気絶していたとは判断したのだ。

「ああ、もう!何その暢気さ!この状況見てよ、ここ明らかに会場じゃないでしょうが!!」

は暢気にしている姉に呆れながらも突っ込み、自分たちの現状を確認させる。

目の前に広がるのは、現代では田舎でもなかなか見られない、歩道整備もされていない道に、開拓されていない平野。電柱どころか民家さえ、人さえも見えない。

「…のどかだね。……で、どこ?ここ。」
「リアクション薄いなあ!?如何考えても、地元ではないよ。携帯も通じないし、何より桜なんか咲いちゃってるし!!今の季節は秋も終わりって頃なんだぞ?!ワケがわからん!!」

の言葉通り、道の所々に桜が咲いていた。

しかも、どれも満開であるから、狂い咲きという訳では無さそうだった。そして、は近くにあった自分の手荷物である鞄を見つけ、その中から携帯を引っ張り出した。
しかし、の言うように、の携帯も圏外を示していた。

「…あ、ほんとだ。じゃ、取り敢えず此処がどこか誰かに尋ねに行こう?見たところ、ここって舗装はしてないけど道みたいだし、歩いてたら誰かには会えるでしょ。」
の突っ込みを軽く無視して歩き出すに、は慌てて防具を持って追いかけた。

「待ってよ!変な人に絡まれたら如何すんの!?」
「大丈夫。」

の言葉に、は自信満々に答える。

「その時は、私の自慢の片割れが助けてくれるでしょ?」
「…はいはい、っと。」

そう言って微笑むに、は呆れながらも頷くのだった。

・。・。・・。・。・。・。・・。・。・。・・。


それから、半日。日は大分傾き、もう夕暮れの頃になっていた。
は町の入り口までたどり着いたものの、些か困っていた。

…と言うより、戸惑っていた。

夜に差し掛かっていると言うのに活気に溢れた人並み。
あちこちで花見をして笑いあう人々に軽やかに響く歌声、煌びやかな軒並み。
そして、街中に点在する大きな太鼓に、誰かを模った大きな張りぼてのような物。

「ね、ねぇ。はここ、どこに見える?」
「そうだな…敢えて直球に言うなら『BASARA』の京都?」
「ですよねー…。」
の言葉に、項垂れる
「だって、さっきから『慶次』とか『まつ』ってフレーズがやたら聞こえるし。前田家名物の追いかけっこでもしてるのかな?」

「…これ、夢ではないよね。痛覚はあるし。」
は軽く自分の口を捻るが、やはり痛い。

「あ、これってもしかしてトリップ?やった!生の幸村がいつか見れる…かも!!」

「あんたさっきから気楽過ぎだろ!?もしそうだったとして、どうやって帰るかわかんないんだぞ!!」


「まあまあ、お二人さん。」

嬉々と喜ぶに、いい加減にしろと掴みかかった。しかし、その手をやんわりと掴む手が現れ、二人はそちらを仰ぎ見た。

そして、硬直した。


「喧嘩して怪我でもさせちゃったらどうすんの。彼女、お嫁に行けないよ?」

その手の主は、前田慶次だった。


目を見開いて固まっていた二人は、しかし、正気に戻ったのか同じタイミングで口を開いた。
「ま、「はちょっと黙って。アンタ、何?」」
前田…と言おうとしたの口を塞ぎ、は眼前の青年を睨んだ。

「あん?俺は前田慶次って者だけど。そう言うあんた達は?」

「へえ?可笑しなことを言う奴だな。この京都で慶次といえば前田慶次。その前田慶次ってのは、ついさっき『まつ姉ちゃん』とか言う人に追いかけられていたはずなのに…何時その人を撒いたんだ?序でに言えば、小猿は用意出来なかったのか?」


そう言って口元を歪めるに、青年はニッと笑った。


「あらー?鋭いねぇ、君。もしかして同業者?何処の里?」


そう言って、一瞬のうちに黒い靄と共に現れたのは、迷彩の忍び装束を着た青年。表情はにこやかなものの、その手には彼の武器である大手裏剣が回っている。
明らかに、こちらを警戒しているのがわかり、は内心焦りを感じていた。

「!?す、ご。ねぇっ!今のが変化かな?!!」

「―…っ、もう、ちょっと黙ってて!今やばい雰囲気なの察して!?」
彼のその姿を見ては興奮するが、それ所ではないとは切羽詰った声を出す。


「…君も苦労してるみたいだね。何か、親しみを覚えるよ。」
「うっさい!あんたも妙な親近感覚えんな!!」
構えていた大手裏剣を下げて同情の目を向ける青年に、は泣きたい気分になりながらも叫んだ。

「んじゃ、ちょいと本気出そうかな、と!!」
「!ちっ!!」
「きゃ!?」


先程までの雰囲気とは打って変わり、殺気と共に間合いを詰めてくる青年に、は咄嗟にを突き飛ばし、持っていた竹刀の入った袋でその攻撃を受け止めた。

「あはー、凄いね君。俺様これでも強いんだよ?」
「はっ!いきなり攻撃してくる人間が強いとは思えないね。」
ギリギリ、と力比べに移行された攻撃は、確実にの体力を削っていく。


!」
「今のうちに逃げろ!こいつ、マジだから!!」

「同業者と不審者を逃がすわけ無いでしょ?目的吐くか、殺さない限り逃がさないよ?」


駆け寄って来ようとするに、は逃げるように促す。しかし、それを見逃すはずも無く青年は分身の黒い影をへと放つ。
は逃げるものの、ややもせずに追いつかれるそれに目を瞑り、来たる衝撃に身構えた。

…が、それは来ることは無かった。

「止めんかぁあ!佐助ぇ!!」
「「!!?」」

「ちょ、旦那!?何で止めんのさ!!」


それを、旦那――真田幸村が止めたからだ。

「我らは此処へは私用で来たのだぞ?このような騒ぎ、町人に迷惑であろう!!」
確かに、町人は先程から遠くに避難をしてこちらを不安そうに見つめている。

「でもね、旦那。この子達、と言うかその女の子怪しいでしょ?妙な服装だし、旦那の事知ってるみたいだったしさ。それにこの子も、女の子と同じ顔だし彼女を逃がそうとするし、それに妙に強い。怪しすぎるでしょうが。」
力比べを止めを指差し次にを指し、佐助と呼ばれた青年は軽く主人に睨みを飛ばす。

「だからと言ってこのように騒ぎ立てて如何する!俺はそのような命など与えておらぬぞ!!」
そう言って睨み返す幸村に、佐助は渋々ながら武器を仕舞った。


「すまなかった。怪我は無いか?」

に向き直った幸村は、心配そうに彼女を見る。生身の幸村を間近で見たは首が千切れんばかりに横に振り、大丈夫であることをアピールした。
「!はい、私は大丈夫です!ね、!」
「そうかい、俺は疲れたよ…。」
佐助からの攻撃を受けていたは、ボロボロになった竹刀袋を中身ごと投げ捨て、その場に膝をついた。

「あはは、ごめんね?大丈夫?」
「…いい性格してるね、アンタ。」
「あ、俺は猿飛佐助っての。君は?」

手を差し伸べて自己紹介をする佐助に、はそれを取ることなく立ち上がる。

「…。」
「私はです!」

「某は真田幸村と申す!して、お主らは今宵宿を取っておるのか?見たところ、町人では無かろう?旅人と言う様でもないようだが…ワケありでござるか?」

幸村のその言葉に、二人はそうだったと項垂れた。
「俺たち、宿無しだよ…と言うか、無一文。」

「ふむ。…では、この幸村、我らの泊まる宿に口利きをして頼んでみよう。春とは言え、夜はまだ冷えるでござるからな。」

「旦那!?だから、そういうのはヤメテ!俺様の身がいくらあっても足りないから!!面倒に首を突っ込むのヤメテ!!」
「何を言う!此処であったのも何かの縁ではないか!」

「…ほんと、俺も親しみ覚えるよ。」


佐助の叫びに、先程の彼ではないが妙な親近感を覚えるだった。

・。・。・・。・。・。・・。・。・。・・。・。


京都のある宿屋にて。

幸村は二人にそれぞれ部屋を用意するように宿主に申し付けるが、一部屋で良いとは言った。
「真田殿。俺たちは一部屋で十分だ。」
「お金がもったいないし。」

「な!?ならぬ!男と女が同じ部屋など、破廉恥でござるぞ!?」

幸村の生「破廉恥」に、は感動していた。…は呆れていたが。

「いやいや、旦那。この子達双子だから、キョウダイだから。」
「それでも、破廉恥に変わりない!!」
佐助がの肩を持つが、幸村は一向に首を縦に振らない。


「…。お前は、俺を何だと思っているんだ?」


引かない幸村に、先程から聞き捨てなら無い言葉を浴びせられ、は青筋を浮かべた。
それに身の危険を感じ、幸村は顔を引きつらせた。

ちなみに、佐助は早々と安全地帯であろうの隣に非難している。

「な、何とは…殿の御兄弟であろう?」
肩にかからない髪、中性的な容姿、身形、言葉遣い、佐助と渡り合う実力から考えた結論を幸村が口にすると、はキョトンとした。

「違いますよ?幸村さん。は―…」

「俺は、の、い・も・う・とだ!!」


「なぁ!?お、女子だと申すのか!!…も、申し訳ない。気付かなかった…。」

信じられない、と驚く幸村と密かに目を見開く佐助。
恐らく、佐助も幸村と同じように男兄弟だと思っていたのだろう。

「…理不尽だ。主従揃って、その性根叩きなおしてやろうか!!?」
拳を握ったは、掴みかからんばかりの勢いだった。

。やめなさい。相手は幸村よ?武将よ?」
「ちっ…分かったよ。」

の一言で、は拳を下ろした。
「殴り合いする前に気絶させる自信あんのに。」

「…佐助さん、弓矢あります?」
の呟きに、は笑顔で佐助に問いかけると、彼は何処からともなく言われたものを取り出して渡した。
「はいよ、っと。でも使えるの?」

「私、弓道有段者だから♪」

そう言って、は弓矢を実の妹目掛けて戸惑いも無く放った。
「「!?」」
やめろー、と叫ぶと弓矢を放ち追いかける
その光景を、きっかけとなった二人は気の毒に見つめるのだった。

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2 オカンは大切に。


宿に落ち着いた一行。結局二人で一部屋を使うことにした姉妹は今、幸村の休む部屋に来ていた。
「んじゃ、改めて。どうして、旦那の事知ってたの?」
佐助が改まった態度で質問をしてきた。

は如何するべきか…と悩んでいると、が口を開いた。

「私たち、この世界の人間じゃありませんから。ここは、我々の世界では本や絵巻物として描かれているんです。」
「!!?」
何素直に話してんの!?と突っ込み、佐助は余りに予想外だったのかキョトンとしている。

「某たちが、書物に…?」
信じられない、と幸村は目を見開く。

「うん。ここがその通りの世界じゃないかもしれないけどね。もし、書物通りだとしたら私たちはその本とかに馴染みがあるから、君たちの事はちょっとくらいなら分かるよ。信用ならないなら、試してみて。」
「…じゃ、俺様から質問。」
「どうぞ。」
そう言って神妙な顔になる佐助。も緊張気味に、先を促した。

「俺様の最強武器って、なーんだ?」
「さすけって書いてあるディスク…円盤でしょ?」

まるでクイズを出すかのように問う佐助に、は即座に答えた。
現代で相当ゲームをやり込んでいるため、その手の質問は朝飯前だった。

「へぇ、正解だよ。旦那の好物は?」
「団子。甘味。」

まさか当てられるとは思っていなかったのか、佐助は感心しているようだった。
そして、再び問われた質問に今度はが簡潔に答えた。

「俺様と同郷知ってる?」
「かすが。上杉謙信に寝返ったよね。かなり素敵な体躯をしてる人。」



それから数十分。佐助はことごとく質問を難なく答えられてようやく諦めたのか、息を吐いた。そして、あはー、と何時もの笑顔を貼り付けた。

「…マジで色々知ってるみたいだね。俺様ビックリ。」

「私もビックリだよ。まさか、佐助がこんなに忍らしいことするなんて。私が知っているのは、もっと『幸村のオカン』してる佐助だから。」

あはは、と佐助と笑いながらも毒を吐いたに佐助は固まった。
「…俺様、泣いてもいいかな?」
落ち込む佐助に、は肩を叩いた。

「…堪えねばならんのだよ。」
「師父!」

「…どうでも良いけど、それ違うから。ハガレンだから。」
「はがれん?」

コントを始めたと佐助に、は小さく突っ込んでいた。幸村は内容の意味が分からず?を浮かべていた。


本題に戻って、の話を聞きながら何やら考えていた幸村は、ある提案をした。
「うむ。では、帰り方が分かるまで、我らと共に甲斐へ来ぬか?お館様には、某からお話し申そう。」
「いや、それは悪「本当?行く行く!!」…。」
それを断ろうとしたを遮り、は行くと言い張った。


。…知ってると思うけど、私…武田軍が一番好きなの。」

「そうかい。俺は自由が一番好きだよ。」

冗談じゃない、とが言っているうちに、は上機嫌になって言った。
「じゃあ決まりね?これから暫くご厄介になります、幸村。佐助。」
「人の話聴けよ…っ!」

の訴えは、無視と言う形で聞き入れられることはなかった。

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翌日。甲斐へと行くことになった二人は、幸村と共に厩に来ていた。
「京より甲斐へは、馬を飛ばせば二日もかからぬが…お二人は馬の経験はござりますか?」
乗馬の経験がないなら、交通手段は一気に時間のかかるものになるのだ。

「俺は無い。馬なんて、俺らの世界じゃ滅多に乗らないからな。」
少し恥ずかしそうに答えるとは反対に、はニッコリとして答えた。

「私は流鏑馬の稽古もした事あるから、多少の憶えはあるよ。」
昨日、あれからと同様にタメ口をする伺いを立て、すっかりタメ口を利いていた。

「じゃ、ちゃんは馬に乗って。ちゃんは、旦那の後ろか前ね。」

「は!?」
「な、何故そうなる!?」

と幸村は同じような反応を見せ、明らかに動揺していた。
それを見た佐助は、苦笑しながら答えた。

「だって、ちゃんは馬の経験があると言っても二人乗りなんてしたこと無いだろうし。それに、もしダメそうなら俺様が後ろに乗ってちゃんの馬を操るから。」

「!」
「流石オカン…。」

ちゃん…俺様、君には嫌われる事してない心算だけど。何か、恨みでもあるの?」
昨日から今日にかけて、何回かしていたやり取り。

毎回、同情を佐助に向けるは、しかし今回、沈黙していた。

「…早く行こう。」

それだけを言って、幸村の馬へと近づく
「「「?」」」
それに、三人は出来上がっていた流れを断ち切られ、目を丸くしたのだった。

・。・。・・。・。・。・・。・。・。・・。・。


「…ねぇ、何か怒ってるの?ちゃん、て。」
京を出発して半刻。佐助は先程のやり取りが気になっているのか、の走らせる馬の隣を伴走しながら訪ねた。

「さっきの事、気にしてるんですか?」
「…まあね。言外に、ちゃんは俺様を恨んでる、みたいに取ったのかな。」
何時もならば気にしないことを気にしている自分に、佐助は自嘲の笑みを浮かべた。
それに気付いているのかいないのか、は微笑んだ。

「まあ、教えませんけどね。楽しいから。」
「酷!?それはないでしょうが、ちゃん!てか、道知らないのに先々行かないで!?」

あはは、と笑いながら速度を上げるに、佐助は後を追いながらも突っ込むことは忘れなかった。


その様子を、少し後を走る幸村とは静かに見ていた。
「真田殿。」
不意に、前で手綱を握る幸村に、は声をかけた。

「何、でござるか?」
緊張しているのか、僅かにどもりながら、幸村はその声に返した。

「…と相乗りしたかっただろ?」

「!?な、何を申す!?破廉恥な!!」
思ってもみない事を言われ、幸村は赤面した。

しかし、先程…というより、昨日出会ってからの一連の彼の所作を考えて、は確信に似た物を持っていた。

「無意識か…まあ、は喜ぶだろうね。」
「!!?か、からかわないで下され!!」

今度こそ耳まで真っ赤になった幸村を見て、刹那はしてやったり、と笑みを浮かべた。

「ほら、見失っちゃうと困るんだから、頑張って。」
気付けば、たちと少し距離が出来てしまっていて、幸村は急いで馬を急かした。

・。・。・・。・。・。・・。・。・。・・。・。

Side 佐助


甲斐へと目指して馬を進めていた俺様たちは、予定より大分順調に進んだから一旦休憩をとる事にした。
適当な茶屋を見つけ表の腰掛に座ると、出てきた売り子に注文をする。
「団子とお茶、四人分よろしく。」
「団子は追加で二十本頼む!」

「あ〜、結構疲れるね、馬って。私あんなに長時間走らせたこと無いよ。」
「…幸村の発言は無視なのか。」

相変わらずのちゃんに突っ込むちゃん。ここまでは最早見慣れたものだったが、俺様はその中で気になったことがあった。

「…今、ちゃん旦那の事呼び捨てにしなかった?」

「ああ。さっき、そうしてくれって言われたからな。本人に。」
「あ…そうなんだ。」

何となく、何故そう思うのかはよく分からないが、気に食わないと思った。

「じゃあ、俺様も名前呼んでよ。何気に、俺様ちゃんに『アンタ』しか呼ばれたことないし?」
「は?」

自分で言うのもなんだが、俺様らしくない言葉だったと思う。
ちゃんも思ってもみない言葉だったのか、俺の言葉にキョトンとしている。

「佐助…男の嫉妬は醜いよ?」
「は!?い・いやいや、そんなんじゃないからね!?」
「慌てんでも誤解なんてしないって。」

ちゃんにからかわれているとは思いながらも、やっぱり突っ込まずにはいられなくて勢い良く否定したら、ちゃんは呆れながらも笑ってそんな俺様に突っ込んだ。

…なんでなんだろう。

物凄く、イタイ。
身体ではない…心が、悲鳴を上げている。


「如何かしたのか?佐助。」

旦那は、俺を不思議そうに見つめている。
俺は掛けられた声に、ハッとして我に返った。

「…え?」

旦那の言葉に、俺様はワケが分からずに首を傾げるとちゃんが教えてくれた。
「眉間に皺寄ってるよ?」
「…ああ、ごめん。ちょっと考え事してたからかな。」

少し苦しい言い訳だけど、何時ものようにあはー、と笑えば旦那たちはそれ以上追及して来なかった。

「…。」

そんな中、静かに此方を見つめてくるちゃんの視線に、俺様は態と気付かないフリをした。
心中では、悲しむ自分と、それを信じられない自分がいた。


だって、こんな俺様は可笑しいんだ。

高が女一人、その言葉に揺さぶられているなんて。


忍が聞いて呆れるってもんだ。




Side 佐助終了。


続きます。(カルマのふたり)