チェリーハート
自由人には気をつけろ!
・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。
「ちゃんとって、姉妹の割りに似てないよね。顔以外。」
「「え?」」
それは、佐助の何気ない一言から始まった。
「私がみたいな男っぽい物腰…面白そう!!」
やってみたい、と面白がる。
「…今更、みたいには出来ないぞ。俺が女っぽくなんて…寒気がするっ!!」
顔色悪く、本気で嫌がる。
「可愛いと思うけどなー…。」
二人には聞こえない程度に呟く佐助。
斯くして、二人の入れ替わり作戦が始まった。
・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。
「鬘とは言え、短い髪って変な感じ…。この格好は動きやすいけど♪」
「……重い…。」
は嬉々としてその場でクルクル回り、対するはちょこんと座ったきり動こうとしない。
は鬘で髪を肩ほどまでに調節し、動きやすそうな、ジャージに似た服装をしていた。機能的で軽いそれは、を何時もの着物姿より格段に身軽にしていた。
一方のは、鬘で髪を胸ほどの長さにし、服装は刺繍たっぷりの内掛けを羽織った状態。何時もの服装に比べて、かなり重い。その上化粧も施され、機嫌は余り宜しくない。
「ところで、…本当に旦那をからかいに行くの?ちゃん。」
「え、ダメ?」
今にも飛び出しそうなに、佐助は少し複雑な気分だった。
「もしバレたら、減給くらうの俺様だし…。」
そう言って重い息を吐く佐助に、は少し考える素振りを見せた。
「あー、成程ね…ま、大丈夫よ。私が…じゃなくて、オレがどうにかしてやるってばよ!!」
「…『てばよ』って。が、『てばよ』って。」
「NARUTOだよね〜?」
笑顔で出て行くに、二人の突っ込みは聞こえていなかった…。
・。・。・。・。・。・。・。・。・。
「な、は…破廉恥でござるううぅぅっ!!!!」
「「!?」」
慣れない着物に苦戦しながら歩くとそれに付き合う佐助は、幸村の絶叫に嫌な予感が走った。
佐助に抱えてもらってその場に出ると。
「あはは!幸村逃げるなよ〜!」
「い、い、何時もの殿ではござらぬうぅっ!!」
見た目のが、幸村に抱きついていた。
「は。はは…悪夢。」
「…。見た目、何か気に入らないね。」
引きつった笑いを漏らすに対し、佐助は口元すら笑っていなかった。
「旦那が困ってるのは正直見てて楽しいけど。見た目だけとは言え、それをがやってるっていうのは頂けないね。」
「…今、何気に鬼畜属性の腹黒発言がなかったか?というか、恥ずかしいことを言うな!」
佐助の発言に顔を青くしたり赤くしたりするに、佐助はニッコリと意地悪な微笑をむける。
「あれぇ?言葉遣い、如何しちゃったの?『ちゃん』?」
「(嗚呼、こいつはオカンなんかじゃない。…こいつは隠れSなんだ。)」
妙な確信を持ったは、じりじりと佐助から逃げるために足位置を変えた。
「…俺様から逃げきれるかな?今のが。」
しかし、逃げようとしていたのはバレバレで。
歩幅一つ分も空いていない二人の距離で、佐助はの手を握って笑みを深くした。
「…そうだね。逃げるのは無理そう。」
そう言って、先程まで冷や汗をかいていたは微笑み、それを見た佐助は見蕩れてしまった。
「嫌ぁあっ!!幸村―っ!!!」
そう叫んだ声は、とても女性らしい声で。
「え…?」
目の前の女性が出したのは分かるが、普段ハスキーな声を出すがか細く甲高い声を出したことに、佐助は固まった。
「!!、殿に何をしておるのだ!!?佐助えぇっ!!!」
その声に反応した幸村は、一瞬のうちに佐助の懐まで潜り込み、アッパーを食らわせた。
「…流石、信玄公をふらつかせるだけあって鋭い一撃だな。」
「む?…もしや、殿?」
佐助を文字通りぶっ飛ばし、背後に匿ったであると思った人物はで、幸村は混乱した。
「…と、言うことは、先程の殿は殿…???」
「ああ、そうだよ。オレとが入れ替わってたんだ。」
「ぁーっ!?どうしたの、一体!!?」
の叫び声と、突然目の色を変えて消えた幸村に、は不安そうに走り寄ってきた。
「うん…もう、これ脱いでもいい?自分で一発殴らないと気が済まねえ。」
ぴりぴりとした雰囲気を醸し出すに、早々に入れ替わり作戦は閉幕したのだった。
・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。
それから数日後。
幸村とは、珍しく二人で城下に下り、お茶をしていた。
「幸村はのことになると、人が変わるな。」
「!…やはり、殿もそう思うか?」
この間の一件以来、幸村はに対して何時も以上の反応を示すようになった。
それを本人も自覚し始めたらしく、こうやってに相談しているのだが。
「お?それじゃ、自覚しだしたのか。やっと。」
「う…ま、まあ一応…?」
そうやって、珍しく団子に手を出さない幸村は、しきりに溜息を吐く。
「(乙女チックだな…恋煩い、か?)」
その様子を横目に見ていたは、そんな幸村に苦笑する。
「は、ああ見えて頑固で意固地だからな。本気なら…そうだな、恥ずかしがらずに気持ちをそのまま伝えることだ。」
「き、気持ちを素直に!!?!?」
の言葉に赤面する幸村に、は落ち着くように促した。
幸村の声で周りの目がこちらを向いてしまい、それに気付いた幸村は恥ずかしそうに俯いた。
「…好き、とかじゃなくて。感謝の気持ちだったり、に対して思ったことを何でもその場で口にしていたら…向こうも気付いてくれるんじゃない?」
それを、まるで幸村の姉のような気持ちで見ていたは、幸村に助言をした。
「う、うむ…。殿と佐助はそうやっておるのか?」
「何でそうなる!!?」
予想外なことを言い出した幸村に、は目を剥いた。
「?違うのでござるか?佐助が毎日、嬉々として殿とのことを話すのだが。」
「…今度会ったら、噛み殺してやる。」
のその声は、隣の幸村にさえ聞こえることはなかった。
・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。
それから。
と幸村の立場は逆転することになったのは、また別のお話。